「そうそう、食べましたよね！ 泉屋のスパゲティ」

　昨年横浜でお会いした釧路出身のＴさんは、なつかしそうにそういった。

　なにしろ盛りがよかった。普通のを注文しても、火傷しそうに熱いスパゲティが鉄皿からあふれんばかり。空きっ腹を抱えた高校生が満腹するほどだったのである。最近はハングリーな若者が減ったせいか、量もほどよくお上品になったけれど、試みにわずかの金額を追加して、大盛りを注文してみるといい。たぶん腰を抜かすのではないか。

　寄る年波には勝てず、ぼくもさすがに大盛りを平らげるのは苦しくなった。ここの名物はスパゲティ・ミートソースに豚カツをのっけた、通称スパカツなのだが、このごろではそのこってり味も受け付けなくなった。

　そこで選んだのが、あっさりしたスパゲティ・泉屋風。普通なら腹七分目、大盛りなら腹十二分目。取材(？)の当日は空腹だったから大盛りでもよかったのだが、あいつは大食漢だという評判の広がるのを恐れて、普通にしたところは小心者丸出し。

　釧路で高校時代を過ごした方ならきっと知っている泉屋は健在である。