写真上は昨年12月に撮影した旧釧路海上保安部の建物である。壊そうとするものと、壊されようとしているものとが向き合っていれば、なにが起ころうとしているのかは誰だって見当がつく。

　吉田商店の最後の日を看取ったように、この建物の終焉を見届けたかったのだが、仕事の都合がそれを許してくれなかった。

　明けて2001年正月、ぼくは20世紀を生き延びた古い機械式一眼レフを携えて、港町に向かった。

　予想通り、ばかばかしく無意味な空地が目の前にあらわれた。古いものがいつまでも残るはずのないことはむろん承知しているが、その空白を埋めるに足る新しいものがこの国に出現することを、今期待できるだろうか。