日赤坂、といってもわからない方がおられるかもしれない。現在は相生坂という。あるいはもともと相生坂が正式名称だったのかもしれないが、ぼくの子供の頃は日赤坂が通り名になっていた。たぶん当時坂の上に日赤病院があったのだろう。散歩するには格好の場所のひとつである。

　1955年に父がこの坂を撮った写真がみつかったので、比較対照するためにぼくも旧日赤坂を撮影した。写真の角度はいささか異なるし、あいにく女学生も通りかからなかったので、比較資料としては厳密さに欠けるけれども、新旧の景色の違いはおわかりいただけると思う。

　坂そのものはさほど変っていない。木の手すりが金属製に変り、路面が舗装されたくらいであろうか。大きく変化したのは空だ。広大無辺であるはずの空が、かなり狭まったのである。

撮影：1955年7月(左 (C)J. Hitomi）2000年10月（右）