ひさしぶりに散歩に出かけたら、あった、あった。昨年付近を工事していたので、たぶん取り壊されるのではないかと予想していたのだが、まだ残っていた。

　崩壊寸前の老残の姿をさらしているのは、もとの釧路海上保安部庁舎である。ぼくにとっては愛着のある建物だ。全体にワープしており、正面玄関などカメラをどう構えようとも、どこかの辺が必ず斜めに写る。

　具眼の士が少ないせいか(？)、歴史的建築物として保存しようという声はついに上がらなかったし、今となっては手の入れようもなく、実に惜しいと思う。日頃没個性の町並にうんざりしているあなたは、港のさびれた一角に、老いたりとはいえなお一種の風格を漂わせる白い建物を発見し、思わず目を見張ることであろう。

　丹頂鶴よりも啄木の歌碑よりも、まず旅人に推薦したいのがここである。余命いくばくもないと思われるので、早い機会に行くべし。

　【つけたし】あざやかな夕焼けに誘われて、会社帰りにもう一度写真を撮りに立ち寄った。このサイズでは判別困難と思うが、左側の煙突のてっぺんにカモメがとまっている。

　旧釧路海上保安部庁舎は2000年12月に取り壊された。
　(See 20世紀に消ゆ)